製品
このほど、インペリアル・カレッジ・ロンドンの Malcolm Connolly博士に、ナノ電子デバイスを量子コンピューティングに応用する研究について話を伺いました。 インペリアル カレッジの量子科学・デバイス施設(QSDF)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)をボトムローディング式Proteoxシステムに統合した最初の研究センターであり、試料交換時間を短縮するように設計されています。Connolly博士は、mK温度帯においてSPMの測定を達成した研究室は世界でも数少ない中で現在のプロジェクトである量子ハードウェア開発の課題とデバイスのトポロジカル物質を作る有望な新しいアプローチについて、貴重なコメントを提供して頂きました。
現在の研究で力を入れている分野はにてついて教えて下さい。
QSDFは、量子計測科学の発展と、量子ハードウェアのスケーリングにおける重要なボトルネックを克服するデバイスの開発に焦点を当てています。 私のチームは、高品質の量子ビットを構築するために必要な超伝導材料や半導体材料の重要な特性を特定するとともに、トポロジカル物理学を活用して再現性ある約束された性能を達成する革新的なコンセプトを探求したいと考えています。
研究において直面している課題にについて教えて下さい。
主な課題のひとつは、絶対零度に近い温度でナノ電子デバイスに現れる魅力的な量子効果を利用するか緩和するかを決めることでです。 このような極端な条件下では、電子は粒子と波のように振る舞い、驚くべき、そしてしばしば直感に反する現象を引き起こします。 私たちは、どの物理現象がデバイスの性能にとって最も重要であるかを特定するだけでなく、長期的な価値を持つ可能性のある発見を探求する好奇心を育む必要があります。QSDFの新しいProteoxシステムは、そのバランスを達成するのに役立っており、新しい発見への扉を開くと同時に、正確で的を絞った調査が可能になりました。
Proteoxシステムは、研究の生産性にどのような影響を与えていますか?
オックスフォード・インストゥルメンツとAttocubeは、チューニングフォーク式原子間力顕微鏡(attoAFM III)をProteoxボトムローディング型サンプルパックに組み込みました。このシステムにより、サンプルの交換が冷凍機自身を昇温せずに行えるため、デバイスを室温からベース温度まで1日以内に冷却でき、実験をたくさん行えるようになりました。
Malcomとインペリアル大学の研究グループ
このシステムが低振動である事により、AFMを用いてmK温度領域で高品質の画像を取得できます。システム全体が高い信頼性を持っているため、冷凍機の運用よりもデータ解析や実験デザインに集中できるのは素晴らしいことです。
研究における最近の進展について教えてください。
最近の量子コンピューターへの関心の高まりにより、超伝導量子ビットを使った研究が日常的なものとなっています。 産業界にとって重要な課題は、量子ビットの性能をいかにスケールアップして維持するかということですが、私たちはこれを逆転させ、量子ビットを材料を探求し理解するためのツールとしていかに活用するかということに着手しています。 その一例が、トポロジカル絶縁体と集積した量子ビットの最近の研究です。これらの材料は、電子を表面やエッジに閉じ込めることで、ノイズや無秩序の影響を軽減できる可能性があり、技術的に大きな可能性を秘めています。 このような利点の実用化については、多くの基本的な疑問が残っており、量子ビットはこれらの不確定要素に対処するための貴重なツールとして活用しています。 Proteoxの広い温度範囲(10 mK - 10 K)での動作能力は特に魅力的であり、デバイスの古典的挙動から量子的挙動への移行を観察することができます。
トポロジカル・材料への新しいアプローチについて、もう少し詳しく説明していただけますか?
私たちは、大きな外部磁場をデバイス内の固有磁性に置き換える新しいアプローチを研究しており、これによって、よりクリーンな電子材料を用いたトポロジカル材料の創製が可能になるかもしれません。磁性材料のさらなる最適化が鍵となりますが、最近の結果は、我々が正しい方向に進んでいることを示唆しています。 従来のエレクトロニクスにおける磁性の役割が確立されているということは、この方法を改良し、発展させるためのツールや技術がすでにあることを意味しています。次の重要なステップは、顕微鏡を使って、私たちが考えているように磁気が電子に影響を与えていることを直接確認することです!
研究の今後の展開について教えて下さい。
今後数年間は、学界と産業界の両方の科学者と協力する予定です。彼らはナノスケールの構造がコヒーレンスや安定性といった重要な指標にどのような影響を与えるかについて、顕微鏡を使って洞察することで直接メリットを得ることができます。私たちはこれまでアクセスできなかった情報を明らかにする、電子デバイスに関する量子科学の探索を始めたばかりです。トポロジカル材料を検出する強力なツールとして、量子もつれをどのように利用できるのか? 量子もつれを材料科学のブレークスルーのために活用する革新的な装置や技術が開発される可能性はあるのだろうか? これらは、私たちの将来の研究の原動力となるエキサイティングな問題です。
希釈冷凍機システムProteoxは、研究の生産性を高めるために、システム間で交換可能なセカンダリーインサート(SI)が組み込まれており、冷凍機外のワークベンチ上で実験をセットアップを組み付けることができます。これにより、システムの重要な配線を変更する際や、複数の研究チームで冷凍機を共有する際に冷凍機外で実験配線を組み立てることができます。実験セットアップを変更する際に、クールダウンの間の時間を短縮することが可能です。
セカンダリーインサートは、オプションとして特許取得済みのボトムローディングシステムと一緒にご利用頂けます。ボトムローディングシステムにより冷凍機やマグネットを室温に戻さず迅速に試料交換が可能となり、交換の際に試料を取りつけるサンプルパック(右写真)内にはインペリアル カレッジの場合と同様にAFMを統合することも可能です。
低振動であるProteoxはインペリアル カレッジでのこの研究を行うために不可欠であり、標準的な高剛性架台を用いてAFMでは優れた分解能を示す画像が取得できました。
インペリアル カレッジ向けに、オックスフォード・インストゥルメンツはAttocubeのAFMをProteoxに統合するプロジェクトを主導し、このシステムが工場受入試験(FAT)と現場受入試験(SAT)の両方に合格する責任を負いました。AttocubeのCEOであるPeter Kraemer氏は、「このパートナーシップについて 当社の原子間力顕微鏡とオックスフォード・インストゥルメンツのシステムとの統合は、精密測定能力における一歩前進を意味します」と述べています。
このコラボレーションにより、ナノスケールの探索と操作のための改良されたツールを研究者や業界の専門家に提供することができます。当社は、量子研究や材料科学における様々なアプリケーションに、この統合されたアプローチが有益であると確信しています。
ご研究にサポートが必要な方は弊社までお問い合わせください。また、無冷媒希釈冷凍機Proteoxについてはこちらをご参照下さい。
関連トピック