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サー・マーティン・ウッド賞2019受賞者である井上圭一博士の、パンデミックのため延期されていた英国の大学への講演旅行が2022年夏に実現しました。その際、光栄なことにオックスフォード・インストゥルメンツに立ち寄られ、受賞した研究の内容や英国の大学への講演旅行について伺うことができました。コロナ禍のため対面での交流ができなかった時期が長くありましたので、この大きな成果を共に祝うことができたことは、非常に意義があったと感じています。
リチャード・ヘンダーソン教授のノーベル受賞の基となったロドプシンのバルサ材模型を手にする井上圭一博士(中央)と、ヘンダーソン教授(左)、ナイジェル・アンウィン教授(右)。
COVID-19の期間は、自分の研究に集中し、深く考えることができたので、悪いことばかりではありませんでした。また実際にカンファレンスに参加して、他の研究者と交流できることは、新しい研究を始める上でとても重要なことです。
光受容型膜タンパク質である微生物型ロドプシンが持つ機能の多様性の解明です。また、その分子メカニズムの解明とオプトジェネティクス(光遺伝学)への応用についての研究です。
様々な機能を持つロドプシンを初めて報告できたことを嬉しく思っています。また、私の研究によって、メカニズムの深い理解を通じて、より良い分子ツールを構築できたことも大きな成果です。
この間、ロドプシン配列から機能を予測する新しい機械学習手法の構築に成功しました。また、ロドプシンとベストロフィンの巨大複合タンパク質であるベストロドプシンを発見し、これもイオンチャネルの一種であることを明らかにしました。
COVID-19で大変な状況になった後、実際にイギリスやドイツの研究者と交流し、施設を見学する機会を持つことができ本当に助かりました。特に、物理学だけでなく、化学や構造生物学、神経科学など、幅広い分野の研究者と交流できたことは、今後の研究を考える上で非常に有意義でした。
1975年にクライオ電子顕微鏡を使用して決定したバクテリオロドプシンの歴史的構造モデルを手に、リチャード・ヘンダーソン教授、ナイジェル・アンウィン教授と記念撮影を行えたことです。
微生物型ロドプシンに関する研究では、英国の研究者と交流する機会がほとんどなく、幅広い分野の方々と議論できたことが特に重要でした。
このレクチャーツアーは、若手研究者にとって、普段はなかなかできない幅広い研究者との交流を築くことができ、今後の日欧共同研究の推進に役立つ大変重要なものです。本プログラムが末永く支援されることを心から願っています。
(この記事は、Sir Martin Wood Japan Science Prize Winner 2019: Dr Keiichi Inoue の翻訳です。)