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先週、ナノサイエンスとThe Quantum Daily社は、ドキュメンタリー映画「Quantum Technology | Our Sustainable Future.」を公開しました。本作品では、量子技術が化学や物理などの主要分野でどのようにイノベーションを起こしているかなど、量子技術の持続可能性をめぐる議論を探っています。この特別公開に合わせて、「自然を利用した自然科学の計算を行う」というコンセプトから、持続可能性という重要テーマを掘り下げた記事をご紹介します。
ノーベル賞を受賞した物理学者のリチャード・ファインマン氏は、「自然界で発生する分子のシミュレーションに、古典的なコンピューターを用いることは、各々が異なった論理に基づくため計算できない。その代わり、量子力学の法則に従って物理学を現実世界に適用し、コントロールできる別のオブジェクトセットを使用する必要がある。」という有名な説明をしています。
この最初のブログ記事では、NanoScience部門のManaging・DirectorであるStuart Woodsが、古典的なコンピュータと量子コンピュータを比較し、この分野への投資によってどのように持続可能性を確保して、最終的には地球に貢献できるかについて考察しています。
量子コンピューターの利点を理解するには、古典コンピューターの性能を見るのが一番です。これらのコンピュータは、一連の数学的演算を高速で実行し、ゲームをしたり、ビデオを見たり、世界中の人と通信したりする機能を提供する機械です。これらの愛すべきデバイスは、古典力学と古典情報理論の法則を用いて我々の疑問に答えてくれます。
自然界の有機的な疑問は、古典力学や古典情報理論の法則では解決できません。自然界の疑問に答えるためには、質問の仕方から計算方法を変えなければなりません。仮に古典コンピュータが惑星サイズになったとしても、従来のコンピュータでは解決できない問題があります。例えば、タンパク質の構造や、タンパク質が生物学的に機能するようになる過程であるタンパク質の折りたたみを解くには、量子力学の法則を用いなければなりません。
量子コンピューターは、自然界の分子や原子をシミュレートし、複数の計算経路を並行して実行することで、優れた能力を発揮します。しかし、エラーやスケーラビリティについては、まだまだ課題が残っています。従来のコンピュータでは、各ビットのコピーを取っておくことでエラーを解決していましたが、量子力学の基本原理により、任意の量子スケールのコピーを作ることはできません。また、スケーラビリティの観点からは、計算上の困難を解決するために適切なアルゴリズムが必要となります。古典的なコンピュータでは予測できない問題に答えるために、この2つの分野で開発が進められています。
現在、政府は250億ドルの資金を投じて、量子コンピューターのエコシステムを構築しています。このような開発と並行して、量子コンピューターは、自然を発見する上での最大の疑問に答えるためにすでに使用されています。CO2や石炭の生産に関わる問題であっても、これらの変数は膨大です。このような自然のプロセスの理解を助け、複数の事柄を並行して見ることができるコンピューターを持つことは、地球の破壊を抑えるためにまさに必要なことなのです。
現在、私たちはスーパーコンピューターや人工知能など、発見のスピードを上げることができる技術を持っています。科学をより速く行うことはできますが、現在できていることは根本的に欠陥があります。世界で最も優秀な実験化学者でも、週に5回の実験しかできないかもしれません。しかし、スーパーコンピュータでは物理や化学のシミュレーションはできません。基本的には試行錯誤の繰り返しです。本当に地球を救うためには、あらゆる手段を駆使する必要があるのです。
コードで実験を再現できる量子コンピューターモデルを構築し、実験室と連携して実験を行うことで、実験室はより多くの実験を継続的に行うことができるようになります。これにより、科学者は自分の仮説をより早く検証できるだけでなく、自分のアイデアをより早く実現できるようになります。また、これらの実験の精度が向上し、自然界の最大の課題を解決するためのブレークスルーが可能になることが期待されます。例えば、無駄をなくしたり、減らしたりする方法を理解するには、これらの課題の背後にある化学的性質を把握することが必要です。
PsiQuantum社のPete Shadbolt氏によると、今日、人々が化学を扱おうとするとき、事実上、石器時代の道具を使っていることになります。しかし、量子コンピューターをいち早く使用することで、科学者はこれまでで最も難しい化学モデリングを行うことができました。まだまだ序の口ですが、これがスタートです。
2019年、Googleは量子コンピュータと世界最大のスーパーコンピュータを比較する「量子超越性を示す実験」を行いました。Google Quantum AIのアラン・ホー氏は、量子コンピュータの計算は10億倍速く、エネルギー効率は1兆倍良いと表現しました。このような開発は、量子が計算とエネルギー効率においていかに有益であるかを示しています。オックスフォード大学量子回路研究所のLlana Wisby氏によると、量子の未来はより大きなシステムに依存しており、システムの規模を拡大し、高品質の量子ビットを持ち、それらを制御するためのインフラを構築することが必要だと言います。まだまだ技術的な課題は残っていますが、量子コンピューティングは、これまでとは異なる持続可能な未来への希望を与えてくれる、大きな可能性を秘めた強力なツールです。
Stuart Woods, Managing Director, Oxford Instruments NanoScience
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Stuart Woods